ドイツの鉄道事情

2023年11月24日

電車、列車が時間通りに来るのは日本では当たり前のことですが、日本を除いて他の国の事情を見ると、日本のようなレベルの国はスイスだけです。かつてはドイツの鉄道もその仲間入りをしていたのですが、ここ十年のドイツの鉄道はそれまでと随分違い、遅れが当たり前になつてしまいました。五分遅れと表示されたら、まずは二十分は見ておかなければならないし、二十分遅れだと一時間は必ず遅れると囁かれるような状況です。それでも遅れで済めば良い方で、「本日は運休いたします」と勝手に間引き運転をする有様には、腹が立ち、苛立ちます。

ミュンヘンの総領事館に印鑑証明の代わりになるものをお願いするので、久しぶりに鉄道を使いました。ICEという日本でいう新幹線を使ったのですが、案の定早朝し7時15分の列車から一時間以上の遅れでした。総領事館の到着時間は、遅れを見込んで一時間早めに設定しておいたので、私の用件は無事得ることができたのですが、「今列車は故障のため修理しています」というアナウンスがあると、外は穏やかさを装っていますが、内心では「またか」と煮えくり返っています。ホームで待っている人たちは呆れ顔で見ず知らずの人と顔を合わせて苦笑いです。しかも次の列車も一時間以上遅れるのですから、日本の鉄道事情が当たり前の日本人にはただただ呆れるばかりです。

 

このドイツの鉄道状況は詐欺のようなもので犯罪に等しいものはないかと考えています。私もかつて何回か会議に遅れたことがあり迷惑を被っています。自動車道の渋滞を避けるために定時で行動できる鉄道を使うと言う考えは日本ほどではないにしても、ドイツの場合も同じようなものです。ドイツは車の国ということになっていますから国民の鉄道利用率は当然お隣のスイスとは比べ物にならないくらい低く、国民からの鉄道への期待度は低いかもしれませんが、日本と同様今は民間経営になったドイツ鉄道が本腰を入れていないことが見て取れます。だから遅れても良いのだという理屈は通らないはずです。列車が線路上で突然止まったことが何度かあります。「電気系に異常が見つかりましたので点検のために止まりました」とそろそろ慣れっこになっていたドイツ人ですら「またか。もう聴きたくない」と呆れ顔でした。今回の遅れの原因は日本と故障が見つかり修理中ということでした。どこで修理しているのかは言われませんでした。

ドイツは十年前から、ちょうど遅れが頻繁になったのと符合することなのですが、聞くところによると今までは自国で作っていたものを外注しているということなのです。当時のドイツ鉄道関係の人たちからは大反対だったのに、当時の女性首相が強引に外注にするとおしきってしまったということです。車両、それに伴い電気系、そしてレール用の鋼鉄まで外注しているということです。その結果、鉄道技術を支えているのが、それまでのMade in Germany、メイド・イン・ジャーマニイの技術ではではなくなってしまったということです。大きな事故こそまだないですが、その頃から今では日常茶飯事になってしまった遅れが登場したのです。

今のドイツは政治と経済のために国民の生活が犠牲になっているという点を見れば、何処も同じと言わざるを得ないようです。それなのに日本ではドイツの実情がオブラートをかけ綺麗事として報道される向きがあるのはなんなのでしょう。そうした日本の報道の歪みはドイツの鉄道事情と同じで、政治と経済の犠牲になっているのでしようか。

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