て・を・に・は、つまり助詞のことです
「タクシーを待たせてありますので」、とも言えるし、「クシーが待たせてあります」とも言えます。何かが違いますが、正確にシチュエーションを説明するのは難しいです。文法の説明はもっと難しいです。
「象は鼻が長い」は一文に、しかもこんな短い文の中に主語が二つもあると言うことで、文法の世界では大変な有名人です。「象の」とすれば文法が問題視することは何もないのですが、主語が二つある文章は文法がとても苦手です一つの国に王様が二人いたら混乱してしまうようなものです。
ほとんどの言葉が一つの文章の中に主語は一つなのですが、聞くところによるとアラビア語も日本語のように一文に主語を二つ入れることができるのだそうです。どちらも複雑そうな人種です。
「象は鼻が長い」、をドイツ語に訳すとなると、「象という動物がいます、その動物は鼻が長いのが特徴です」、としなければなりません。「象は鼻が長い」の直訳は無存在しないからです。あるいは思い切って「象は鼻が長いのが特徴です」という方向に持って行くこともできそうです。いずれにしても「象は鼻が長い」というアクロバット的表現は外国語ではできないのです。許されないのです。
日本語にはこのようなアクロバット的表現がたくさんありますから、外国語を勉強する時には、このアクロバットをわかりやすく自分なりに分解しなければならないということになります。この作業がどうしても必要なので、日本人は外国語との距離を感じてしまうのです。まずは日本語を日本語として翻訳して、それから外国語に翻訳しなければならないからです。
ドイツ人が英語を勉強するときは横滑りでOKです。語順は殆ど同じですから、単語を変えるだけで大体通じます。しかし「象は鼻が長い」は横滑りが不可能なのです。従って「象は鼻が長い」的に言葉を使っている日本人は外国語が苦手ということにならざるを得ないということです。
とはいえ、日本語の「て・を・に・は」と言えども大体は西洋語の前置詞の様なものです。外国の人が日本語を話すときに、よくできる人でも助詞をうまく使えていないことがよくあります。前置詞はどの言葉を見ても複雑怪奇で、ヨーロッパ語同士の中でも単語は横滑り的に移行させられますが、前置詞はお国柄が強く出るもので、横滑りが非常に難しいものです。「電車できた」という時にもそれぞれの言葉が用いる前置詞は異なるのですから厄介です。どうでもいいといえばそうなのですが、耳触りが悪いものです。豚カツをわさびで食べたり、刺身をケチャップで食べるようなものですから、理屈ではなく習慣がものをいうのです。説明を求められても説明はできず、「そう言うので、その様に覚えてください」としか言いようがないのです。助詞を正確に使いこなしている外国の人は尊敬に値します。
最近の日本語は助詞の使い方が変わってきている様に感じます。生活習慣が変わってきているのでしょうか。