謙遜の美学は時にはマイナス文化
日本的という言い方の中におそらく謙譲的なものが含まれているはずです。
謙(へりくだ)ってということですから、西洋型の主張する文化とは真逆での文化です。名古屋の一角で何年か前に、290円のラーメンというのを見た時に、経済に疎い私ですら、これって非現実的な価格だとすぐに解りました。後でそこの事情を少し知っている人から、店主はそれが自慢で、絶対に値段を上げないということで、ますますおかしいと思った次第です。
ドイツでの買い物というのは、スーパーなどで済ませるときは日本とほとんど同じですが、野菜市などで買い物するときは少し違いますが、とりあえずはドイツ人との売り買いですから、基本は同じです。
しかし売り手の人が東洋人だと様子がずいぶん違ってきます。秤で一キロのジャガイモを買ったとして、測った後に二、三個おまけしてくれたりするのです。トルコのお魚屋さんではいつも一匹おまけが入っています。これもお客さんに安く売っているので、名古屋のラーメン290円に共通する、多分アジア的な謙遜文化による商売なのだと思います。
ドイツでラーメンを食べたら1800円から2500円くらいです。一応手間がかかっているという売りなのですが、結構インスタントのスープで誤魔化している店もありますから、実際にはボロ儲けということだと思います。ところが実際にはそれくらいの値段をつけないと場所代、人件費などを見込んだとき採算が取れないというのも現実です。とりあえずそういうもんだと納得するのですが、それなりの味なら何度もゆきますが、また食べたいという様なものではないので、「向学のために一度は食べてみました」という挨拶がわりのおつきあいです。
私は290円のラーメンに、正直腹が立っているんです。
こんなに安くしちゃダメだと大声で怒鳴り込みたいくらいです。これでは他に良心的にやっている店が迷惑するではないかと思うのです。
お客さんに安く提供するという基本でやっているのでしょうが、これは間違った謙遜です。
美味しい手間のかかったラーメンなら正々堂々と正規の値段をつけて商いをすべきなのです。
ラーメンは大衆の食べ物ということですが、手間暇かけたラーメンは高級料理の一角を占めてもいいほどです。たかがラーメンでもいいですが、これぞラーメンと値段を上げる方向に考える様になったらいいのにと思っています。
インフレの時代に良くないことを言っている様ですが、正しい値段というのは、安すぎる値段に比べて健全なものだからです。