ライアーの音、向こうからくる音

2023年12月20日

ライアーという楽器は根本的に通常の楽器と距離を置いているように感じています。意図的に伝統楽器とは違うものを考えてできたところもあります。

例えば人生にあって、目的を定めてそこにがむしゃらに向かってゆくというような生き方とは違って、ぼんやりと、ある意味曖昧に生きている人のような感じとライアーは符合するのかも知れないと思っています。

もちろん音楽をするための楽器ですし、立派な弦楽器なので調弦をして音を調律するのですが、他の楽器のように調律が思い通りにならない楽器のようです。私は調律のための機械を使うことはしません。音叉で「ラ」の音をとったらそこから四度・五度と繰り返し最後は三度で確認しながら調律します。機械で測ったものはどこかで間違っているように聞こえてならないからです。ライアーはどことなくぼんやりした音なので、機械的な意味での正確な音というのは不向きなようです。

そんなんで音楽を奏でる楽器として通用するのかと首を傾げられてしまうかも知れませんが、なんとかなっていると信じたいです。

 

もしかしたらグリッサンドが一番ライアーの魅力を醸し出しているかも知れません。実際に楽器をいじったことのない人が、目の前に横たわっているライアーを不慣れな指でポロロンとグリッサンドのように指をずらしただけで、そこから聞こえてきた音に惚れ込んで「この楽器買います」と言ってしまったほどです。

楽器としてはほとんどの楽器と違っていて、よく言えば一味違います。大きな特徴は大きな音が出ないことです。同じ弦楽器でもヴァイオリン系の弓で弾く楽器はライアーとは比べ物にならないくらい音が大きいです。ですからオーケストラと共演することもできます。しかしライアーにはそんなことは無理です。

ギターに近いと言えば近いものですが、ライアーは引っ込み思案で、口下手ですから、ギターやほど華やかな世界を作り出すことはありません。ギターでフラメンコを踊るような状況はライアーでは考えられないのです。

 

とは言いつつも、ライアのために他の楽器で演奏される作品をとです。たくさん編曲したりしているわけです。罪作りなこととは半ば意識してのことです。ライアーのために作られた作品があるのでそれを演奏すればいいともいえますが、私の耳にはまだ馴染みのない音楽に聴こえるのでライアーが喜んで響いているようには思えないのでほとんど弾きません。

それよりもよく知られた曲などをライアーで弾きながら、何がライアーに合うのかを見定めて行きたいと思っています。そのためによく知られた作品を編曲してみたのです。ライアーを知らない人にもライアーのことを知っていただくためにと考えて編曲しました。

ライアーは無口だと言いましたが、音そのものにはとても力強い説得力があります。先ほどお話ししたグリッサンドの例のように、何気なく弾く音が、びっくりするほどいいのです。音が向こうからやってくるという感じが一番ライアーらしいのかも知れません。

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