教育の背景

2024年8月7日

教育はいつも時代を背景に持っているものの様です。

ペスタロッチはフランス革命の時に孤児となった子どもたちを集めて孤児院のようなものを作りそこで子どもたちに教育を施しました。彼の考え方は子どもの個性に見合った教育であり、精神性を養うために倫理的な生き方を示し、人間として生きてゆくための根幹を育成しようとしたのでした。時代背景はフランス革命と言っていいのかもしれません。ペスタロッチの指導を受けたと言われる、幼稚園の創始者フレーベルは産業革命が起こると社会の風潮は労働力を育成する必要の中で、子どもたちを集め、学校で集団生活ができるように子どもを教育する姿に心を痛ませたに違いありません、そこから幼児期を心豊かに育てる必然性を感じたのでしょう。その後の教育は、大雑把と言われてしまうかもしれませんが、いかに社会に役立つかを主眼としたものといってもいいと思います。ペスタロッチやフレーベルが大切にした精神性、倫理性は影を潜めてゆきました。

1919年にシュタイナーが学校を設立します。その時の二週間に及ぶ集中講義、後に教育芸術として3巻の本にまとめられる講義の初めに「この教育は知性や、感性だけでなく倫理をし育てるものなのです」と言葉にしています。

しかし残念なのは、その後、シュタイナー教育は「治療する教育」と言う観点で語られることが多くなるのです。教育は治癒、治癒と結びついて考えられるのです。私はここにやはりある時代背景があるように思えてならないのです。それは、当時心理学者たちの間で、さまざまな歴史的な天才たちをいろいろな病名をあてがって説明する風潮があったのです。優秀な人ほど病んでいるとでも言いたげなものでした。天才イコール病人でした。私の若い頃にはその手の本が随分とはやっていて、大変なブームだったのです。そんな中で基本的に人間はどこか病んでいると考える風潮が蔓延したのでしょう。ますます混沌としてゆく社会状況の中で、心の病が増えていったことも事実です。国家をあげてうつ病対策に取り組んでいます。そうした背景の中で治療という考えが社会に深く定着していったのです。それに伴って大変な種類のセラピーが一つの社会現象になっていきます。そんな中でシャタイナー教育のスローガンに「治癒する教育」が使われたのかもしれません。

私はシュタイナー教育の中心は治癒や治療ではないと考えているものです。創造の意志であり、創造の中の喜びであり、想像によって鍛えられる直感のようなものが教育を支えているもだと考えているのです。倫理性は人間が意志を働かせる中で育まれるのではないかとも考えています。シュタイナー教育は生きる喜びを子どもたちに与えたいと願っているのではないのでしょうか。

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