日曜版 1 夏の家族たち、Augst:Osage Countryのユーモア
日曜日生まれのの子どもは特別だという言い伝えがドイツにはあります。妖精のような普通の人に見えないものが見えるといます。恵まれた人生を送るともいわれています。新しいブロクが日曜日に始まりますから、今回のブログは特別なブログになるでしょう。
映画の話しをします。
映画を取り上げるのは珍しいです。私はヴィジュアルなものよりもフォネーテックな方から刺激をもらい、喜びを感じるタイプなのでしよう。映像人間というよりも聴覚人間ということです。とくに誇張された映像を見せられ、誇張されたセリフを聞いていると体調を崩します。
映画に就いて何か書くには今まで見た映画の数が少なすぎます。ところが、先日日本からドイツに帰る飛行機の中で見た映画については今までない興味を覚えたので書いてみます。
映画のタイトルは「八月の家族たち」、オリジナルは「August:Osage Country」です。日本では4月18日封切りだということです。
数ある機内の映画プログラムの中からこれを見ようと思ったきっかけは女優Julia Roberts、ジュリア・ロバーツでした。この人の映画は十年以上前に「ノッティングヒル」を見て以来でした。この映画、不思議な恋物語で、普通の恋愛ものではなく、映画で童話の世界を作った様なところのある、誇張もハッタリもない純粋な映画でした。オスカーの主演女優賞に輝いている人ですから、ノッティングヒルだけでなく他の映画に出演していますが、ノッティングヒルの印象が良かったのでそれを壊したくなかったため敢えて見ないでいました。えこひいきの様なものです。それなのに今回は違って、これを見ても彼女に抱いているイメージが壊されない様な気がしたのです。
この映画のストーリーはこれから見る人に話しをしてしまうと怒られるので控えます。しかし、結末が大事な映画ではないですから構わないと思うのですが、やはり控えます。
皮肉な会話のやりとりの中から、普段は表面には出にくいものが浮き彫りにされます。映画の中の会話は始めっから終わりまで辛辣ではらはらするのですが、演じる人たちがセリフを普通に言うため嫌味がなく、辛辣なセリフから来る残酷さが楽しめます。セリフがユーモアでオブラートされているからだと思います。
初めはここまで露骨に言うかとびっくりしました。しかし慣れてくると会話の辛辣さが面白く楽しめるのです。はらはらするほど辛辣で残酷な会話のやりとりが笑えるのです。なかなかにくい作りです。この辛辣さ、残酷さが実は喜劇、コメディーだというのに気が付いた時には、目からうろこで、心が躍っていました。
悲惨な時代には優れた喜劇が書かれなければならない。ドイツの詩人ノヴァーリスの言葉ですが、「お前も喜劇を書け」と私を励ましています。一つだけ喜劇を書いて死にます。
いやらしい、見ていてうんざりする様な感情表現がなく、辛辣な会話もごく普通にやりとりされ、そこからくっきりと状況が見えて来るところも唸らせます。こんなことを一度は言ってみたかったと思う様なセリフが幾つも登場します。思わず噴き出したりしてしまいます。痛快です。ある種のカタルシスを覚えます。
イギリスのブラックユーモアとは違うユーモアです。アメリカにもこんなブラックな会話術があったのだというのが今回の発見でした。アメリカ映画は政治で使われる様なセリフが目立ちどうしても好きになれませんでした。今回は人間に向かっていたように思います。豊かな感情としなやかな精神は喜劇でしか現わせないと確信したことも今回の映画の収穫でした。
喜劇が書きたくなりました。そのために言葉を磨きます。