わがライアーの音 夜空の星の様に
このところ夜空はジュピター、木星が燦然と輝いています。
あの星の光の様な存在感をライアーで弾けたらと願います。
七番目はクープランです。
何故クープランなのか、そこから始めます。
答は弾きたかったからです。
音楽に目覚めた頃テレビでクープランを聞きました。
それがクープランだということは後になって先輩から教えられました。
その音楽は装飾音が散りばめられていて、私は夢の中をさまよっているようでした。
柿本人麻呂の歌が枕詞をちりばめて作られているのに比べられそうです。
装飾音は単に装飾音ではなく、人麻呂の枕詞のように存在感があるのです。
こんな音楽があるんだと驚いて聞きました。
感動にはいろいろな種類のものがあるとしても、それは感動ではなく驚きでした。
今まで聞いたことのないものを聞いた気がしたのです。
そのあとはクープランからは遠ざかってしまいました。
ほとんど演奏されることがなく、聞く機会が無かったからです。
当時はレコードにすらなっていませんでした。
ライアーでクープランを弾き始めた時、あまりの美しさに驚きました。
自分の耳を疑ってしまうほどでした。
きめ細かに音が繋がっています。
今まで聞いたことがないライアーの世界でした。
改めて言いますがライアーは難しい楽器です。
ヴァイオリン族と比べると、音が出るまでの苦労はすく無くて済むかもしれません。
ライアーは初めての人でも弦に触れればすぐに音が出ます。
それは真実であり、誤解です。
その音では音楽になりません。
音楽になる音が出るまで、ライアーも随分かかります。
メロディーが好きな人はついメロディーの力に負けてしまいます。
そうすると一音がおろそかになってしまい、貧弱な音楽になってしまうのです。
そちらに早い時期から走ってしまうと、後で取り返しのつかないことになってしまいます。
自分でも随分後戻りを余儀なくされたものです。
クープランの美しさは音と音の間の呼吸です。
この呼吸が音にならないとクープランは神経がいら立つ音楽になってしまいます。
ライアーでヘンデルを弾くようになって、音楽の呼吸が見えて来ました。
ヘンデルの胸を借りていなければクープランは無理だったと思います。
クープランはフランス人ですからドイツとは違い、抽象的にならず、しかも音楽がいつもお話しをしています。
一方的に言いたいことを言うのではなく、相手がある会話でしかも優雅です。
多くの人にライアーでクープランを弾いてもらいたいです。
その挑戦から新しいライアーの世界を垣間見ることは請け合いです。
一音への気遣いが深くなります。
音楽が呼吸するのがしっかりとつかめるようになります。
音楽が主張ではなくなります。
ライアーの音が深くなります。
いいことだらけです。