ピアノをライアーの様に弾きました

2016年3月20日

義父が弾いていたグランドピアノが今我が家にあります。四十年以上の間、義父はほとんど毎日ピアノを弾いていましたから、そのピアノが人手に渡ってしまうのは忍び難く我が家に引き取ることにしました。

義父の喜びを分かち合ったそのピアノは、弦が木に深く染み込み余韻を残しながら消えてゆきます。普段ピアノに感じる無機質なものはなく、音は呼吸をしている様でもあり、ときには静かに祈る様に感じることもあります。

義父はバッハの音楽を精密機械の様に正確に弾くことが喜びでしたから、晩年思う様に弾けなくなってからはだんだんピアノから遠ざかってしまいました。八十五歳の誕生日のときに、「指が動かなくなってしまった」と寂しそうでした。

義父の喜びの一番の理解者だったそのピアノは今我が家に居場所を移し新しい弾き手に胸を貸してくれています。

このピアノは私が持っていたピアノへの偏見を取り払ってくれました。

一音がとても良く響くのです。

ピアノはライアーと違って指と弦の間にたくさんのメカニズムがあって、大抵のピアノの場合、そのメガニズムが気になってしかたがなかったのですが、義父のピアノは、長年義父と付き合ったために、まるで義父の腕の一部にでもなってしまったかの様で全く気にならないのです。だからしばらくピアノに付き合ってみようかと思っています。

手始めにバッハのゴールドベルク変奏曲のアリアの旋律を弾いてみました。

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