目が笑う
笑いがなかったら生きていてもつまらないと思うのですが、ドイツにはよく苦虫噛み潰したような顔をしている人がいるんです。笑わないのかなぁ、体に悪いだろうと他人事ながら気になつてしまいます。笑わなかったら生きていてもつまらないと思うのですが、よくブーブー文句を言っています。
人を笑わせるのはことのほか難しいことです。理由は笑いというのがとても繊細だからです。押し付けられないし、笑いを引き出してくるなんてできないですから、笑わない人はそののままにしておくしかありません。喜劇役者が小さな劇場の一列目に全然笑わないお客がいてやりにくかってと話していました。その人の席のところだけが真っ黒だったと言っていました。笑うと明かるのだとその人は逆に感動したそうです。笑うというのは、花が咲くということらしいです。
笑いは国によって、人によって、気をつけないとジェンダー問題に引っかかりますが、女性と男性でもずいぶん違うものです。ドイツ人の間では、半分冗談、半分本気で、カソリックとプロテスタントでは笑いが違うというようなことを言います。私はその辺りが少しずつわかるようになってきました。
笑っていても目が笑っていないと笑ったことにはなりません。ある哲学の会で、学識の高そうな方と同席したとき、そのかたの目が全然笑っていないのがとても気になりました。他の人がプレゼンしている時など、一応笑顔を作られるのですが、私には本心からは笑っていないように見えて仕方がありませんでした。もしかしたら本気で聞いていないのではないかと勘ぐっていました。目は心の窓だし、口ほどにものを言いますから、目が笑っていなかったのがとても気になったのです。
私は人に紹介された時など、その人がどういう肩書きを持っているのか、どんな発言をする人なのかはほとんど無視しています。その人の声と笑い顔を見るだけで十分だからです。それも目が笑うかどうかです。笑っていない時にも目が綺麗で、ほくそ笑んでいるような人がいます。そういう人が発言している時にはしっかり耳を傾けます。
生まれつき目つきがきつい人がいました。いっときヤクザな世界に染まってしまった経歴の持ち主でした。彼は自分では笑っているつもりなのに、いつも他の人からは警戒されているように感じて、なんとかしたいと悩んでいて、整形手術も考えたほどですが、整形のお医者さんから手術ではどうにもならないと言われやめたそうです。その人は解決策とし優しい顔になるサングラスをかけることにして、外で人前に出る時にはいつもサングラスを着用していました。西洋ではサングラスをかける人を多く見かけますが、さすが室内では外します。日本ではサングラスをかけたらかけたで却って不審がられてしまうので、たいして効果は無かったのではないかと想像します。
笑顔を作るセミナーってあるのでしょうか。私はそれより優しい目を作るセミナーがあればそちらにの方に行きたいです。