恵みの雨

2021年4月14日

ありがたい気持ちが素直に伝わって来る言葉です。恵みと雨というのは余程のことがないと結びつかないものです。それがこの言い方では自然な流れの中で調和しています。

恵みという言葉はすぐ手垢がついてしまう言葉ですが、恵みの雨には嫌味な押し付けがなく素直に受け取れます。こういう言葉が好きです。というよりこんな生き方が好きです。

昨日、一昨日と雨が降りました。寒波か゜きていたので四月だというのに時折雪混じりという冷たい雨でしたが、緑が待ってましたと言わんばかりにいっぺんに吹き出しました。まさに恵みの雨でした。

新緑の季節の始まりです。ドイツはブナ林が所々にあって、この季節はブナの新緑に呼ばれるように、好んでそこを歩きます。緑の海の中を新緑に溶けてしまうような錯覚を覚えることもあります。

この緑の海の中で心に聞こえてくる音楽があります。シューベルトの「Das Lied im Grünen(緑に染められて)」です。この歌の伴奏を聴いていると、ブナの水平に伸びた枝についた透明な淡い緑の葉っぱが陽の光を浴びた姿が思い出されます。この歌は新緑の緑に染まった森の中で物思いに耽る青年の心を歌ったものですが、物思いに耽りながら、森の緑に染め上げられ一つになってしまうのです。西洋音楽の歴史の中で、自然をこのように表せる音楽家はシューベルトだけです。彼は自然の中の自分を歌うという基本姿勢で音楽を満たしてしまいます。決して自然を表現しようとしないのがシューベルトです。シューベルトの音楽には禅僧が「何も考えないで息と一つになる」と言い切るような東洋的な融合の境地があります。天からの恵みなのかもしれません。

 

 

 

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