笑いの秘密
感情表現の代表格はなんと言っても泣きと笑いです。
泣くと言うのは民族的な違いをあまり感じないのですが、笑いの方は民族や文化によってずいぶん異なります。日本の中でも関東と関西では全くと言っていいほど違いますが、ドイツと日本では笑い方が相当違います。
オランダ人に「世界で一番薄い本は何か」と聞かれて答えられずに口籠っていたら「ドイツ人のユーモアさ」と言われました。ドイツ人はあまり笑わないと言う印象を持っていたのでさもありなんと納得してしまいました。あんまり笑うと安っぽく見られるという人もいました。必要以上には笑わないと言うことのようです。苦虫を噛み潰したような顔をしている人も随分います。
関西では指鉄砲で「ペン」と撃たれたら、「やられた」とすかさずうずくまるなりして反応しなければなりません。こんなことを改めて書く必要がないほど関西では当たり前なのです。わざわざ書く私はもちろん関東人だからです。一年ぶりに京都田辺の友人を訪ねて会食しているときにお嬢さんに「ペン」と指鉄砲で撃たれてなんの反応もしなかったら、「もう忘れてる」と怒られてしまいました。ところが、関東人の私は関西を離れた瞬間に「ペン」は頭からすぐに消え去ってしまうのです。何度教えられても「また忘れてる」の繰り返しです。
大阪の友人のお嬢さんに関東人と結婚できるかどうか聞いたとき「ダメでしょうね」と間髪を入れずに返事が返ってきて、びっくりしました。「なぜ」と尋ねたら、「笑うところが違うから」と言う答えが返ってきました。笑うと言うのは単なる日常生活の潤滑油ではなく、結婚を決めるときの判断材料になるほど精神生活を反映しているようです。
関西の落語と関東の落語は同じ落語とは言うものの別物だと思うことがあります。関西の方が直接笑いを誘い出そうとしますが、関東は結構高飛車に構えて、周りみちをするように笑わせます。
受けと突っ込みは関東にないものです。これはある種思考方法と言ってもいいくらいのもので、コミュニケーションの基礎を作っています。関西では電車の中が関東と比べると何倍かわかりませんが賑やかです。ただ最近は関西も携帯の影響下にあるようで、以前より静かになったと感じたことがあります。
真面目な人は笑わない傾向があります。ドイツ人が笑わないのはこの真面目というのと関係しています。ヘラヘラ笑ってばかりいると、確かに薄っぺらな印象を人に与えかねないですが、笑わないというクソ真面目な堅物も逆の意味で薄っぺらです。
笑うと解放されると同時に、体の中に溜まった毒素のようなものを放出しているようです。癌には笑いが効果的だと思っている人は多いです。笑いセラフィーは随分普及しています。ただ不自然な笑いは逆に自律神経を壊します。
だーるまさん、だーるまさん睨めっこしましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷっ。この遊びは子どもの頃よくやったものです。自分の感情をコントロールしている人が強いようです。イギリスのポーカーフェイスという文化に通じているのでしょうか。
笑いたいときに自然に笑いたいものです。面白いときに笑いが出ます。面白いかどうかを決めているのは自分です。周りのものをたくさん面白いと決めればたくさん笑えるということです。