母の突然の死

2022年2月28日

今日は母の退院を予定していました。

先週末には退院後の生活に不自由がないための準備が滞りなく終わり、母の帰りを待っていました。

朝四時に病院から母の死を伝える電話がありました。

「今日は退院の日です」と心の中で反発しても「仲淑子さんは今日未明お亡くなりになりました」という病院からの言葉を打ち消すことはできませんでした。

 

母は退院を予定していた今日、亡くなりました。享年九十五歳でした。

なぜ今日なのか、まるで渦に巻き込まれたように足場を失いかけていました。

真逆の方向転換を余儀なくされて、当初は「なぜ」を繰り返すだけでしたが、冷静になるに従い、母が選んだ道が、今の状況の中で最善の道だったことが合点できるようになりました。

死はいつも突然やってきます。

父も母も一人で旅立ちました。

「さようなら」は二人には必要のない挨拶だったようです。

私が交わした最後の会話は

「大丈夫?」

「大丈夫!」

「もうじき帰れるね」

「うん」

でした。

本当に嬉しそうに明るく話ができました。

母はとても嬉しそうでした。

私もとても稀有な幸せを感じていました。

 

いま母はピカピカの新品のベッドで静かに横たわり、病院を出た時とは比べ物にならないくらい穏やかな顔つきに変わっています。時間が経つにつれてどんどん若返って、乙女のような清らかな顔で安らかな眠りについています。

私は今、母に育てられたことの幸せを噛み締めています。そしてそれは大きな誇りとなって私を包んでいます。

「お母さん、ありがとう、お母さん」

 

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