シューベルトがライアーを聞いたら
シューベルトの音楽の秘密は何でしょうか。
この音楽はとても柔らかい、しなやかな音楽です。
他の作曲家の音楽と比べると、よく輪郭の乏しさなんてことを言われます。ところが音楽は形式という外枠を聞くものではないと思っていますから、シューベルトの音楽を聞くとほっとします。
私たちをほっとさせるものがシューベルトにはあります。
シューベルトはソナタ形式というものを使って作曲しても一味違います。
彼にとって音楽は形式よりも、いま鳴っている音、それが音楽だったと思います。
形式にこだわるのは知的な感性です。男性的といってもいいのかもしれません。それは説明するのに便利だからです。そういうものを男性は好みます。
しかし音楽を始め芸術の場合、芸術家は形式で作っているではなく、形式というのは後世の人たちが説明のために用意したものですから、そこにこだわり過ぎると、音楽そのものから却って遠のいてしまうと言うことになりかねません。
形式意識の少ないシューベルトはその意味では女性的なという面があるのかもしれません。
しかし女性的な音楽なのかというとそんなこともないと思います。あくまでショーベルト的です。それはしなやかさというものです。今の時代と、一番遠いいところにあるものです。今はしなやかというよりも、硬直していますから、みんなポキポキおれてしまいます。心が乾いているのです。干からびてしまったのです。
心をしなやかにするためには、水分が必要です。でも水を飲むのではなく、心に水を送るのです。
干からびている心にです。
はじめは砂漠に水をまく様なものかもしれません。
水をまいてもすぐに吸いとられてしまいます。
繰り返しが大事です。
そのうちみずみずしい砂漠が現れるかもしれません。
海の様なしなやかな動きが生まれるかもしれません。
ライアーでシューベルトをひいているとそんなことを感じます。
今はまだ堅い音楽がライアーで弾かれることが多いですが、ライアーこそしなやかさを一番アピールできる楽器だと思っていますから、これからはどんどん柔らかい、しなやかな音楽を演奏して行きたいと思っています。