ドイツに帰って来ました

2022年4月12日

二回、三回とドイツへの出発の日が変更されましたが、四月六日にドイツに帰って来ました。

羽田の近くのホテルに五日から宿泊し、六日の朝四時に起きて、五時のシャトルバスで飛行場に向かうという強行軍でした。定刻通り七時五十分に飛行機は飛び立ち、シュトゥットガルトの我が家に着いたのは二十四時を回っていました。ホテルを出てからなんと26時間の長旅でした。

今回の飛行ルートはいつもとは異なりほぼ南回りで、羽田を出ると名古屋、大阪、広島、福岡の上空を飛んで韓国を通り抜け中国大陸の上をゆっくりと南下してゆきました。そしてチベットの上空に差し掛かった時のことです。そこで目にしたのは万年雪を頂くヒマラヤ山脈でした。ほぼ一万メートルの高さを飛行しているのですが、近くに見えるがとても不思議でした。

そのあとは雲の中に入り、偏西風と悪天候による激しい気流の動きのため何も見えませんでした。飛行機は激しく上下に揺れました。

 

しばらくウトウトしていたようで、気が付くと目の前に広大な大地を巨大な川がうねっているのです。本流に向かって至る所から支流が流れ込む様子は、異様としか言いようのない不思議な光景でした。機内に備えられているマップで調べて分かったのは、その巨大な、まるで大蛇がうねるような姿はドナウ川だったのです。

実際に目の当たりにするドナウ川は地図の上で見るドナウ川とは似ても似つかない、巨大な生き物でした。残念ながら私が目を覚ましたのはイスタンブールの上空だったので、あの有名なドナウデルタを見ることはできませんでしたが、ドナウ川が黒海に流れ込む寸前の河口の大きさには度肝を抜かれました。

ブルガリアとルーマニアの大半をドナウ川とそこに流れ込む何百という支流が覆っているのです。そこは文明社会が造られることはおろか、人間か住むことをすらキッパリと拒んでいるのです。どこを見渡しても橋ひとつない、恐ろしい野生みをおびた光景で、自然という巨大な力をもろに感じ鳥肌が立ちました。

 

余談になりますが、ドイツ語のものの名前は、男性、女性、中性と三種類に分けられます。河川を意味するFlussは男性名詞すが、不思議なことに河川の中が男性と女性に分かれるのです。

ドイツの代表的な川はライン川です。スイスの山奥で湧出しスイスの都市を流れドイツに入ります。ドイツでもたくさんの都市を繋ぎながら最後はオランダの大きな港町ロッテルダムに流れ大西洋に流れ込みます。

ライン川は遠い昔からヨーロッパの流通に欠かせない川で、たくさんの船が行き来します。昔は今のように鉄道や道路が整備されていませんでしたから、川が内陸をつなぐ大きな役を担っていたのです。アルプスを超えたローマ人はこの川を伝わってドイツに侵入し北上したのでした。

このライン川とドナウ川とは川の様子が全く違います。同じ川なのにどうしてこんなにも違うのか不思議なほどです。

ドナウ川は商業的な流通のために使われることはほとんどありません。部分的には見られても、全体からすると全くと言っていいほどないのです。むしろこの川があることで文明が邪魔されているとすら言えるのです。ライン川はたくさんの都市を繋いでいるので、全く逆です。

ライン川は男性名詞でドナウ川は女性名詞です。どうしてそうなのかと小理屈を捏ねても堂々巡りなので覚えればいいだけのことです。ところが、二つの川の持つキャラクターを見ると、どうして二つの川が別の性別で表されるのか理解できるような気がするのです(思い込み神しれませんが)。そしてどうして物が男性と女性とに分けられるのか納得できるのです。

 

飛行機から見たドナウの姿は、母なる大地を悠々と流れる母そのものでした。大地をしっかりと潤しているのです。しかしそのためにドナウ周辺は建物を建てるなど考えられない湿地帯です。

ウィーンはドナウ川の周辺にある唯一の大きな都市です。ドナウ川はウィーンを取り巻くように流れています。芸術の都市ウィーンはそうして生まれたのかもしれません。ウィーはドナウ川に守られているかの様でした。

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